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2001年4月より、慶應義塾大学大学院(SFC:湘南藤沢キャンパス)へ通学中です。そこで感じた“生”のキャンパスライフをお届けします。

■女性に優しい大学・大学院とは?

vol.4 「静粛」が基本の図書館に、赤ちゃんは禁物だ

前回お話した主婦の大学・大学院ブームに続き、その大学の対応を今回はご紹介します。本当に日本の大学が、主婦大学院生を受け入れる態勢が出来ているのだろうか? 私が取材を受けた雑誌の特集では、子育てが一段落して大学に戻るという主婦が多いということだが、私のように大学院在学中に出産を迎えたものは、残念ながら四苦八苦の毎日だ。子供をキャンパスに一緒に連れて行くことは出来ても、せいぜい子供の散歩程度。いざ勉強をしようと思ってもそうは問屋が卸さない。図書館で本一冊借りるにも「静粛」が基本の図書館に、赤ちゃんは禁物だ。


日本の大学の託児所事情

SFCは学内結婚が多いらしく、キャンパス内に託児所をという話も一昨年あたりあったらしいがそのまま立ち消えになってしまった。
「乳幼児、幼児を抱えた主婦の大学生活は受け入れられるのか?」
日本の大学の託児所事情を調べてみた。

名古屋大学名誉教授(教育学)の佐々木亨先生の独自調査では、保育施設のある国公私立大学は62校、その多くは70年代から80年代にかけて女性教員や大学付属病院の看護婦対策で組合が要求して実現したものだそうです。最近、こうした流れとは別の新しい生涯教育の必要性から託児所、保育所が増えている。
アメリカでは大学の学生の48%以上が、なんと30代以上だという。文部科学省の学校基本調査によると、日本の社会人大学院生は2000年では25000人、2002年には33000人に増加している。こういった状況をうけて、大学を生涯学習の場として捉え、子育てのために大学に通えない主婦や、学内で仕事をもつ女性を支援するために、新たに保育所や託児室を学内や関連施設内に作る動きが増えているらしい。

例えば早稲田大学ではこの4月から喜久井町キャンパスで近接するゲストハウスに託児所を開設する。運営は育児サービス大手のコティに委託。早稲田大学では大学を生涯学習の場として捉えなおし、30代の学生の割合を30%以上にしたいということだ。実はこの託児所の開設は、1歳の子供を持つ社会人学生が教員に「子供を預ける施設があれば」と相談したのがきっかけとなったそうだ。

しかし、託児所の開設といえばやはり女子大が先行しているようだ。日本女子大学・学生総合センターでは2001年のセンター開設当初から託児ルームを設け民間に委託している。最初の半年間は10人程度の利用だったが、この1年で延べ60人の利用に増えた。対象は0歳から5歳児まで。 御茶ノ水女子大学では2001年10月から付属幼稚園の一室に保育室を開設。学部生・院生・主婦の科目履修生ら0歳から3歳の子供10人が利用している。


「主夫」にも開放されているようだ

もちろん主婦だけではない。「主夫」にも開放されているようだ。
先日の日経新聞に東京大学助教授・瀬地山 角先生のエッセイが載っていた。瀬地山氏はママチャリでお嬢さんと出勤、大学内の保育所に娘を預け勤務開始。夕方6時頃迎えに行って夕食の準備をするという生活を1年半続けているそうだ。
もともと理屈の通じない子供という存在が好きではなかったという氏も、親になって母性が目覚めたと言う。そして仕事のペースは落ちたものの、娘と過ごす瞬間の大切さを感じているという。

私はこの記事を読んでとても納得した。もしかしたら納得いかないと感じる人もいるかもしれない。子育てと仕事、子育てと学業、どれに重きをおいているのかわからない、と感じる人も多いと思う。実際、私も仕事をバリバリしていた頃は、
「子供を迎えに行かなければならないので、その打ち合わせは途中で抜けます」
などと言われると、
「なんて無責任な!」と思ったのも事実だ。でも子供を設けたいま、その考えは逆転した。すべてを犠牲にして仕事をしていた時代には考えられなかったことだが、いまは何も犠牲にしないことを自分ではモットーにしている。


子供と過ごす瞬間の大切さを痛感

本当は仕事も、大学院生活も、妻の仕事も、子供がいることで相当困難を極めている。でも子供を前に、
「あなたがいるから○○出来ないのよ」
などという態度は絶対にとらないようにしている。何故なら、朝8時から夕方6時くらいまでなら生後3ヵ月からでも預かってくれる託児所を近くに発見したとき、私はその選択肢を捨てたからだ。瀬地山先生と同じく子供と過ごす瞬間の大切さを痛感したからだ。つまり、子供のせいではなく、私は自分のために子供と一緒にいることを選んだ。だから何も犠牲にしているのではない。時間のやりくりなどは相当厳しいが、何故か心が充実している。以前仕事をしていたときの「全てを犠牲にしている」というモチベーションに比べて、精神的に楽なのかもしれない。だから以前の私に比べていまの私の方が自分では気に入っている。仕事を最優先にしているからいい仕事が出来るわけではない。問題なのはその人のモチベーションなのだと思う。

大学に託児所が出来ることで、すでに結婚をしている学生が、
「託児所があるんだったら、子供を産んでもいいかな?」
と思ったという。学業があるから、大学生だったから、子供を産まなかったという選択が無くなることが、実は少子化を迎えている日本にとって生涯学習よりも貢献かもしれない。

“campus lifeはリクルート「ケイコとマナブ.net」での連載です。”