mikazukineko no hitorigoto

2001.3.4. ミカヅキネコの独り言 vol2

永井が結婚した。主婦業もずいぶん頑張っている。女同士、夕飯の献立の話で盛り上がったりすることもしばしばだ。そんな時しみじみと「結婚したんだなあ」と実感する。

が、ここにきて深刻な問題が発生しているのだ。
ご主人は関西の方である。仕事の流れで3人で食事をすることもあり、私も親しくさせていただいているのだが、関西弁の似合う楽しい方である。しかし、驚いたことになぜか彼と話す時の永井は関西弁になるのだ。いや、正しくは、イントネーションが関西訛りになるのである。
本来の永井は東京生まれの東京育ちで、アナウンサーという職業柄、当たり前だが標準語を話す。にもかかわらず、このところご主人といる時間が長いためか、私と話す時さえも妙な関西訛りを発することがしばしばなのだ。

とはいえ、ここまでだと大した問題ではない。逆に仲が良いことの現れで、ほほえましいくらいである。問題は、仕事なのだ。私もまさか仕事で訛ることはないとたかをくくっていたら、・・驚いた。訛っている! 先日のナレーション収録の際のことだ。

収録は順調に進み、偶然にも関西弁のセリフがある内容だったのだが、日頃の慣れもあり関東人とは思えない発音で切り抜けたまではよかった。その後がいけない。なんだかイントネーションが違うのだ。本人も怪訝な顔でNGを連発している。思い余って、「永井さん!関西人になってますよ!」と言うと、「え?ちゃう?」と答える始末。つられて私も「ちゃいますって!」と、もうわけがわからない。その後はなんとか"関東人永井"が復活し、収録は無事終えたのだが、思わず頭を抱えてしまったのである。これって、アナウンサー生命の危機?!何かが頭の中でガラガラと音をたてて崩れていく・・・やばい。
トーク番組に出演した時もそうだ。ご主人の話になって、彼のセリフを言った時などは、気が付くと永井はまた"なんちゃって関西人"になっている。これは微妙である。原稿を読むわけではないので訛ってもいいのだろうが、ここで新たな問題発生なのだ。というのも、とかく関東の人が話す関西弁というのは中途半端になりがちで、ヘタすると関西の人に不快感を与える恐れがあるのである。これまでも、永井自身、関西弁の発音に不安がある時は、西の出身である私(関西ではないのだが、永井にとっては同じらしい)に確認をすることがしばしばあったのだが、こうなったら永井には、完璧な関西弁を話せるバイリンガルになってもらうしかない!この状況は危機ではない。要は、関東と関西の使い分けができればいいのだ!

地獄の特訓が始まった。すでに家にはご主人という完璧な師匠がいるが、ここで油断してはいけない。私も西日本出身者のはしくれである。全面協力の体制をとった。 移動中の会話はもちろん、関西弁しか話してはいけないという"関西デー"まで設定して頑張った。レストランで変な目で見られても、新幹線で子どもに覗かれても気にせず頑張った。その成果あって、永井もずいぶんらしくなってきた。彼女には古くからの関西の友人がいたこともあって、もともと素質はあったのだ。そろそろお墨付きをあげてもいいかもしれない。すべてがうまくいっているかのように思われた、そんなある日。事件はおきたのだ。

その日は、「おーい!ニッポン」という番組に出演することになっていた。毎回、一つの県を取り上げて、その県の魅力を中継を交えながら、たっぷり8時間生放送でお届けするという、かなり贅沢な番組である。午前中の放送が無事終わり、午後に向けていったん休憩に入るという時、それは起こったのである。
スタジオから出てきた永井が、楽しそうに私に言うのだ。 「いやー、ふくすまの人は面白いねー♪」
・・・思わず我が耳を疑った。いかにもその日番組で取り上げた県は"福島"である。そして福島の人はとても魅力的だった。しかし、しかしだ。今、永井は明らかに訛ったのだ。それも東北訛りで。
おいおい!今度は東北弁かい!と思わずつっこみを入れる私の声もむなしく、永井には届いていない。スタッフと楽しげに東北弁を交えてお昼のお弁当の話なんかしている。 お役御免になった"にわか関西弁講師"の私は、今、東北出身のマネージャーを募集するべきか否か検討中である。
このように、常に柔軟な姿勢と感性で、仕事にもプライベートにも臨む永井を、私は"変幻自在自由人"と命名し(決して影響されやすいとは言わない)、尊敬している・・・ようにしている。