mikazukineko no hitorigoto

2001.8.16. ミカヅキネコの独り言 vol5

今年の夏は暑い。雨も降りやしない。また水不足だ。そして、妊婦にとってもこの暑さは相当こたえるらしい。しかも、大学院が7月で夏休みに入り、今まで先送りにしていた仕事をこなすため、この8月はちょっと忙しい。もちろん、マネージャーとして、無理のないスケジュールを組んでいるつもりだが、永井の出産が近くなってきたこともあり、8月中にやってしまわなければいけない仕事が溜まっていることは確かだ。しかし、身重の彼女には、この暑さもあって少々酷なようである。

先日、2週間程たてこんだスケジュールをこなし、一息ついたところで、
「永井さん、今後は出産に向けて、多少余裕のあるスケジュールですから、体調を見ながらゆっくりやりましょうね」と言うと、
「・・・学校行ったり、レポート提出に追われたり、主婦業に忙しかったりしているうちに、仕事って溜まっちゃうんだね・・・楠ちゃぁん、疲れた・・・」
と、ぼそっと言うではないか。その小動物のような姿に、私は胸を打たれてしまった。
思えば、身重ながら、週に数回片道2時間かけて藤沢のキャンパスまで通い、テレビの仕事は多少セーブしているとはいえ、雑誌の取材やラジオの収録に打合せの数々、家に帰れば家事をこなし、連載原稿と大学のレポートを仕上げるという、本人いわく"いっぱいいっぱい"な生活をしてきた彼女。夏休みに入り、ようやく通学とレポート提出から解き放たれたと思ったら、今度は間髪入れず仕事に追われたわけだ。しかも、家事からの解放があるわけではない。この業界で生きている以上、当たり前と言われればそれまでだが、疲れたというのは本当だろう。なんたって身体が普段と違うのだ。
そりゃ、私もレポートの代理提出をしたり(もちろん中身は本人が書いている)、原稿の締め切りを延ばしてもらったり、スタイリストを代行したり、できる範囲内でサポートはしていますよ。でも、今回の彼女の一言で、非常にやさしい気持ちになったのは確かだ。
そういえば、仕事以外でも、食欲旺盛な妊婦の彼女が、太ってはいけないと言いながら、甘いもの病になっているのを厳しく阻止し続けてきた。かわいそうに・・・大好きなソフトクリームを3日に1個しか食べてはいけないなどと誰が決めたのか・・・

そうして、私はやさしさキャンペーンを実施することにした。毎年お正月には、密かに「今年は人にやさしくなろう」と心に誓っている私だ。目標達成にもつながり一石二鳥ではないか。
それからというもの、仕事の移動時間には、今まで以上に余裕をもったスケジュールを立て、彼女がいつ「・・・ソフトクリームが食べたいの」と言っても期待に応えられるようにした。おかげで、都内ではどこのソフトクリームが美味しい、最近あの店でも売っているらしい、などという情報にずいぶん詳しくなった。「ソフトクリームにさぁ、あんことか白玉が乗ってたりするのがあればいいのにねー♪今日はどうしてもあんこの気分なんだよねぇ」などというリクエストにも難なく応じる行動力。
気がつくと、毎週ラジオの収録で行くお台場のスタジオに入る際などは、駐車場の手前で2人していつも何か食べている。警備の方はあきれていることだろう。もはやソフトクリームは3日に1個どころか、毎日の日課である。しかし、おかげで永井はいつもご機嫌だ。やさしさキャンペーン大成功!心持ち私の表情までやさしくなった気がする。
お互い楽しく気持ちよく仕事ができて、なんて理想的なんでしょ、と思い、
「いやー、永井さんがリラックスできて私も嬉しいですよ」と、満面の笑みで語りかけたら、
「楠ちゃん、目尻に笑い皺が出てるよ。20代も残りわずかなんだねえ・・・あとさ、最近顔丸くない?」
とニコニコしながら言い放った。

そうなのだ。永井と一緒に甘いものを食べ続けた私の顔は、やさしくなったというより、丸くなっていたのだった。そりゃ妊婦はお腹の子供と2人分食べる計算だが、私は1人の身体だということを忘れていた。夏なのに太る私・・・暑くて食欲が落ちているのをいいことに、冷たくてカロリーの高いものばかり食べていれば、そりゃ太りますとも。
でもね、永井さん、目尻の皺に関して言わせていただきますと、歳のせいではなく、これは私がいつも笑っている証拠だと思うわけです。皺には人生が刻まれると言うではありませんか。たくさん笑った結果が、目尻の皺なら、私は喜んで受け入れる・・・ようにしたい。
それに、人のことより、妊娠8ヶ月目なんですから、そろそろカロリー摂りすぎですよー。食事制限はしていても、甘味制限しないのはやっぱりやばいっす。
ここは、お互いの幸せのためにも、ソフトクリームはせめて2日に1個にしませんかね?